いよいよ始まるプライム市場の英文開示義務化!2023年以降の英文開示を考える(セミナー開催レポート)
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2024年1月29日更新
今回の記事は、「2023年以降の英文開示を考える ~ 海外投資家ニーズを押さえた英文開示のあり方・作り方 ~」(2023年9月開催)についてのセミナー開催レポートです。
「海外投資家が求めている英文開示とは?」
「どの資料のどの部分を英訳すればいいのか?」
「担当者の業務負担を少しでも軽減できないか?」
海外投資家の英文開示を望む声はますます高まり、それに応えるべく、各企業も英文開示への取り組みを加速させています。そのような状況の中、英文開示に関するお悩みを抱えるIR担当者も少なくないようです。
この記事では、IR担当者さんに役立つ内容を紹介するよ!
セミナー情報
IR業務に従事する方を対象に「2023年以降の英文開示を考える ~ 海外投資家ニーズを押さえた英文開示のあり方・作り方 ~」についてのセミナーを、2023年9月19日から29日までの期間で開催(オンデマンド配信)しました。
講師にはディスクロージャー支援の大手企業であるプロネクサス株式会社から児玉高直氏(システムコンサルティング事業部 事業管理室長)をお招きしました。
それではここからは2023年以降の英文開示はどうあるべきか、セミナーの内容をダイジェストでご紹介します。
英文開示の必要性の高まり
まず企業の英文開示の状況を確認してみましょう。
コーポレートガバナンス・コードが策定される前年の2014年から2022年12月にかけて、英文開示される書類数、英文開示に取り組む上場企業数はともに3倍以上に増加しています。
英文開示される書類数、企業数は2014年から順調に増加
英文開示の動きは今後も加速すると見られます。その背景には2025年3月に予定されている、市場再編の経過措置終了の影響もあると思われます。経過措置が終わる前に本格的な英文開示に乗り出す企業が増える可能性があります。
また、東証が主催する有識者会議(※)では、経過措置終了にあわせて開示書類の英語版の公開義務化に関する議論が出ており、特にプライム上場企業においては、2025年4月より重要情報の英文開示を義務付ける方向となりました。
※「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」を指す。会議議事録、説明資料は日本取引所WEBサイトに掲載。
海外投資家の情報ニーズとのギャップ
それでは英文で発信する必要がある情報とはどのようなものなのでしょうか?
セミナーでは、東証が公表している英文開示に関する海外投資家へのアンケート調査結果をもとに説明しました。
近年の日本企業の英文開示に対し、海外投資家から「概ね改善している」と評価された一方で、「英文開示に満足しているか」という問いに対しては、7割以上の投資家が「満足していない」と回答しています。英文開示に対応する企業が増加しても、海外投資家の不満は依然として高く、企業と海外投資家の間に存在するギャップが浮き彫りになっています。
【不満の要因】
- 日本語に比べ情報が不足している
- 日本語に比べ英文開示が遅い
- 海外投資家が知りたい情報とIR活動(英文開示を含む)が合っていない
これらのギャップを埋めていくには、開示書類をただ英語に翻訳するだけでなく、日本語と英語の差がない情報開示を目指していく姿勢が必要です。
そのためには、英文開示の本当の目的や効果を念頭に置くこと、自社の理解を深めるために必要な情報を企業側から主体的に発信することが重要です。
発信する必要がある情報を把握
英文開示における課題と対応策
日本語に比べて情報が不足している、英文開示が遅いという課題に対しては、英文開示の義務化が決定すれば制度的に改善されていくものと思われますが、実務的な問題は残ります。
では英文開示義務化に備えて、開示書類の対象範囲の拡大や英文開示の早期化にはどのような方法が有効なのでしょうか。それは、正攻法を徹底することです。ここで2つの正攻法をご紹介します。
翻訳メモリの整備とデータベースの構築
【正攻法その1:翻訳メモリの整備】
翻訳メモリとは過去の翻訳を原文と翻訳文のペアでデータベース化したものです。主に翻訳支援ツールで使用し、リアルタイムな蓄積・更新が可能です。このデータベースの構築と活用を徹底することで、翻訳に要する時間の短縮、品質の安定に繋がります。何はともあれ、翻訳メモリの整備が課題解決の近道と言えるでしょう。
【正攻法その2:翻訳メモリ+機械翻訳+翻訳チェックを組み合わせた工程設計】
翻訳メモリを上手に活用し、機械翻訳の高速性を活かすためには、それぞれの良さが最大限に発揮できる工程設計が重要です。
技術的な課題を解決するヒントとして、翻訳メモリなどのデータベースの整備だけでなく、社内の人材育成や信頼できる外部パートナーの確保の重要性についても触れました。
翻訳メモリの正確性を落とすことなく運用するためにも、外部パートナーである翻訳会社を有効活用するのも一つの方法です。
翻訳メモリを使った翻訳支援ツール・機械翻訳の活用については、翻訳センターのウェブサイトでも紹介しています。こちらもぜひご覧ください。
自社にとって必要な英文開示とは?
ここまで開示の対象範囲の拡大と早期化への対応策をご紹介しましたが、海外投資家が知りたい情報とIR活動(英文開示を含む)とが合っていない、というギャップも解消していく必要があります。
セミナーでは、上場企業を時価総額、外国人持ち株比率、上場後の年数などを指標にグルーピングした表を紹介し、各カテゴリーでの英文開示の目的も説明しました。
自社にとって必要な英文開示の検討
時価総額が100億未満の企業と1兆を超える企業では、当然ですが、英文開示の目的は違ってきます。前者には、国内外関係なく、すべての投資家が必要とする情報の円滑な提供が求められ、後者には、国外の幅広い投資家からのエンゲージメント獲得と維持・向上が求められます。ただ闇雲に英文開示を進めるのではなく、義務化の内容も視野に入れつつ、自社の理解を深めてもらうためのジャストフィットな英文開示の設計を考えてみてはいかがでしょうか。
こちらについては本セミナーの関連書籍、児玉氏が共同執筆された『海外投資家ニーズを押さえた英文開示のあり方・作り方』で詳しく解説されています。よろしければお手に取ってみてください。
IR翻訳の外部委託に関する記事もあるよ。興味のある方はぜひチェックしてね!
加速する非財務情報開示の動向
またセミナーの終盤では、英文開示の国際的な流れとして、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)とOECD(経済協力開発機構)の動向にも触れました。
日本国内でも、サステナビリティ関連や人権問題に対する取り組み等、いわゆる非財務情報の開示に関する議論が活発化してきています。ISSBは非財務情報開示を行う際の統一された国際基準を策定する機関として、2023年6月に最初の統一基準となるIFS S1および IFS S2 を公表しています。またOECDのガイドラインでは、特に多国籍企業に向けた人権問題への指針が公表されています。
このような、非財務情報開示に関する国際的な動きも注視しながら、自社に合った英文開示のあり方を検討していくことが今後求められていきそうです。
参加者の声
今回、セミナーに参加いただいた方々にアンケートを実施し、たくさんの回答をいただきました。
その中からコメントや感想の一部をご紹介します。
「英文開示に関して、概論ではなく具体策やアイデアを提供するセミナーは皆無に近いため、大変有益でした」
「貴重な講演内容、ありがとうございます。国内だけで事が済む時代ではなくなっているので、常に外の動きも見ながら業務にあたる必要があると考えております。今後ともよろしくお願いします」
「言語資産の蓄積という点で、もっともスタンダードですが、ここの重要性というものを改めて感じました。ありがとうございました」
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は「2023年以降の英文開示を考える ~ 海外投資家ニーズを押さえた英文開示のあり方・作り方 ~」の内容をダイジェストでお届けしました。
一言で英文開示といっても、自社を取り巻く状況や目的によって求められる情報発信のあり方は違うこと、また、開示すべき書類や範囲、タイミングもさまざまであることがおわかりいただけたかと思います。
最後に今回のセミナーの要点をまとめます。
- 東証から発信される情報を注視しておきましょう
- 海外投資家の要望にも配慮しながら、自社に見合った、実行可能な計画を準備しておきましょう
- 開示書類の翻訳は、データベース(翻訳メモリ)の構築を念頭におき、社内人材の育成、外部パートナーの確保など、組織的な英文作成プロセスを正攻法で構築しましょう
IR英文化についてより詳しく知りたい方は、下記ページをご覧ください。
また英文開示に関するお悩みがありましたら、下記の「翻訳センターへ問い合わせる」からお気軽にご相談ください。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
※記載の法人名、会社名および製品名は、各社の登録商標および商標です。
翻訳センター コーポレートビジネス営業部
とらんちゃん
「とらん」だけに「トランスレーション(翻訳)」が得意で、世界中の友達と交流している。 ポケットに入っているのは単語帳で、頭のアンテナでキャッチした情報を書き込んでいる。
- 生年月日1986年4月1日(トラ年・翻訳センター創業と同じ)
- モットー何でもトライ!
- 意気込み翻訳関連のお役立ち情報をお届けするよ。
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