CAT ツールとは?メリット・デメリットや主な機能を解説

2024.5.29

  • 翻訳あれこれ
CAT ツールとは?メリット・デメリットや主な機能を解説

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    皆さんは翻訳作業と聞くと、どのような作業風景をイメージしますか?

    ペンを持ち、紙の辞書を使いながら原稿用紙に向かう姿を想像する方もいるのではないでしょうか。

    しかし、昨今のデジタルツール普及で、翻訳作業もツールを駆使するスタイルへと変化しています。

    そこで翻訳作業のサポートをしてくれる強い味方がCAT(キャット)ツールです。

     

    この記事では、CATツールの活用例やCATツールの効果を最大限にするためのちょっとしたポイントをご紹介します。

    とらんちゃん

    CATツール?ネコのおもちゃのことかなあ・・・
    ちなみに、とらんはネコじゃなくてトラだよ!!

    CATツールとは?

    CATツールとは、人が行う翻訳や校正作業をサポートしてくれるソフトウエアのことを指します。

    Computer-Assisted Translation の頭文字を取って名付けられ、「翻訳支援ツール」と呼ばれることもあります。
    翻訳者や校正者は翻訳原稿をCATツールに読み込ませて作業を行います。CATツールを使うことで、過去に翻訳した文章の再利用や翻訳漏れのチェックが可能になります。


    機械そのものが自動で訳文を生成する機械翻訳(Machine Translation、略称:MT)とは異なり、CATツールは人による翻訳・校正作業を支援し、さまざまな機能を通じてそのプロセスを手助けしてくれます。

    CATツールと翻訳管理システムの違い

    翻訳に関連するシステムのひとつに「翻訳管理システム(Translation Management System、略称:TMS)」がありますが、CATツールとはその目的とカバーする範囲が異なります。
    CATツールは「翻訳作業そのものを支援」し、TMSは「翻訳プロジェクト全体を管理」するシステムで、TMSはCATツールを内包する上位システムといえます。

    CATツールとTMSを比較すると、以下のように整理できます。

    CATツールを使用する際の手順

    CATツールの使用手順は、以下の5ステップです。

    1. 翻訳原稿の読み込み
    2. 翻訳メモリや用語集のセット
    3. 翻訳・校正作業(セットした翻訳メモリや用語集を参照)
    4. QAチェック機能を活用した品質チェック
    5. 翻訳成果物の出力(元のファイル形式へ書き出し)

    CATツールを使用する際の注意点

    CATツールには画像内の文字情報を読み込むことができないため、そのままでは画像部分のテキストが翻訳されずに残ってしまいます。これを防ぐためには、画像内の文字をあらかじめテキストデータとして処理しておく必要があります。例えば、画像の上にテキストボックスを配置する、別ファイルにリタイプするなどの処理をすることで、翻訳が必要な画像部分をCATツールに読み込ませることが可能になります。

    スキャンされたPDFも同様です。テキストデータとして認識されるよう、PDFの元となったWordやPowerPointファイルを用意するようにしましょう。なお、元のファイルが無い場合でも、翻訳会社にて有料でテキスト化サービスを提供している場合がありますので、ぜひ相談してみてください。

    CATツールの主な機能

    高品質かつ効率的な翻訳作業を実現するためには、従来からの人の手による翻訳作業に加えて、テクノロジーを活用することが不可欠です。ここでは、CATツールの主な機能を3つ紹介します。

    1.用語集

    「用語集」とは、原文と訳文が単語レベルで対になった辞書のようなものです。用語集をCATツールにセットすると、用語集に登録された用語が原文に出てきた際に、CATツールが対応する訳語を画面上に提示します。翻訳者はその用語が文脈的に適切かどうかを判断しながら適用していきます。
    なお、すでに訳語が決まっている用語や頻出用語などをあらかじめ用語集化してCATツールにセットすることもできますし、CATツールで作業しながら用語を登録していくことも可能です。

    2.翻訳メモリ

    「翻訳メモリ」とは、過去に翻訳された原文と訳文のペアを文単位でデータベース化したものです。
    用語集と同様に、CATツール上で翻訳メモリを参照・登録しながら作業を進めます。なお、翻訳メモリは先述のとおり「文単位」で活用されるため、原文との一致や類似箇所が多い場合には、用語集以上に品質安定・作業効率の向上に威力を発揮します。

    CATツールのイメージ図】

    3.QAチェック

    CATツールには、QAチェックと呼ばれる翻訳品質のチェック機能が備わっています。訳抜け、誤字脱字、スペルミス、数字の間違い、用語集違反などを自動的に検知して、校正作業をサポートしてくれます。

    CATツールを使用するメリット・デメリットとは

    CATツールを活用するメリットは、翻訳の「作業効率化」と「品質向上」の両立です。一方で、CATツールを導入するにはシステム費用や学習・運用コストがかかるといったデメリットもあります。
    詳しく見ていきましょう。

    メリット

    CATツールを使用する最大のメリットは、翻訳作業の効率化と品質の均一化を高い次元で両立できる点にあります。

    まず、翻訳メモリを活用することで、過去の訳文や定訳を効率的に再利用できるため、重複する部分の作業負荷を軽減し、作業時間の短縮が可能になります。これにより、大規模な案件や頻繁な改訂が発生するドキュメントでも、迅速かつ効率的な対応を実現します。

    さらに、用語集や翻訳メモリを適切に運用することで、文体や用語の統一が図られ、複数の翻訳者が携わるプロジェクトでも訳文の品質を安定させることができます。

    また、CATツールにはQAチェック機能も備わっており、訳抜け、誤字脱字、用語不一致などを自動で検知することで、人的ミスの防止と品質向上を支援します。

    詳しくは下記ページでも紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。

    翻訳支援ツールの有効活用

    デメリット

    CATツールを使用する際のデメリットとして、まず費用面が挙げられます。CATツールの導入やライセンス取得には一定のコストが発生し、また操作習得や運用にかかる時間・労力も無視できません。特に小規模な案件や予算が限られている場合には、コストパフォーマンスの観点から導入を慎重に検討する必要があります。

    さらに、CATツールによる翻訳では、セグメント単位で訳文が管理されるため、前後の文脈が切り離されてしまい、文章全体の流れや自然さが損なわれることがあります。特に長文や複雑な構成のドキュメントでは、訳文のつながりに注意して不自然にならないよう品質チェックや修正作業が必要となる場合があります。

    CATツールの活用例ご紹介

    翻訳作業を行う際に多くのメリットをもたらしてくれるCATツールですが、より効果を発揮する活用例の一部をご紹介します。

    翻訳分量やドキュメント間の重複が多い案件

    原稿が数百ページに及ぶ案件や、ドキュメント間で同じフレーズが頻出する案件では、CATツールを活用して翻訳メモリを蓄積します。これを再利用することで、翻訳作業を一から行う手間が軽減され、作業が効率化できます。またこのような案件では、ドキュメント全体の一貫性を維持することが重要となりますが、翻訳メモリの再利用により、文体や用語の統一、関連案件との整合性の確保など、品質面でも効果が期待できます。

    【ドキュメント例】
    製品マニュアル、作業手順書、契約書、特許明細書など

    定期的な更新や旧版からの改訂が必要な案件

    定期的に発生する案件では、定型文を翻訳メモリに蓄積しておき、訳語の決まっている用語や頻出用語を用語集にしておくことで、ブレのない翻訳が可能になります。またCATツールには、新規で翻訳が必要な部分を特定する機能も備わっているため、効率的な翻訳作業をサポートしてくれます。

    【ドキュメント例】
    契約書、社内規程、WEBサイト など

    活用例の一部をご紹介しましたが、他の例も知りたい方やCATツールをどう活用したらいいか迷う場合は、翻訳会社に問い合わせてみるといいでしょう。

    効果を最大限にするための3つのポイント

    CATツールを使った翻訳をお願いしたい!
    そんなときに抑えておきたい、翻訳依頼時の3つのポイントをご紹介します。

    1.依頼時に継続/関連案件であることを伝える

    ドキュメントの改訂予定がある場合や、原稿が以前翻訳したドキュメントに関連した内容である場合は、依頼時に翻訳会社にそれらの情報を伝えてみましょう。なぜなら、新規案件と継続/関連案件とではフローに違いがあるからです。
    原稿の背景にある情報を翻訳会社に共有すれば、翻訳会社は状況に適したフローを設計し、ご提案することができます。

    2.Wordなどのテキスト編集ができるファイル形式で原稿を提供する

    CATツールを使って翻訳作業を行うには、原稿のテキストをCATツールに読み込ませる必要があります。
    画像などテキストが取れない原稿データの場合は、CATツールにセットするための加工や準備が必要となるため
    原稿をテキストの編集ができるWordファイルなどで提供すると、準備にかかる費用と時間を抑えることができます。
    なお、Office系のファイルだけでなく、HTMLやXMLファイルなど、多様なファイル形式に対応しています。

    3.参考資料は原文と訳文セットで提供する

    翻訳メモリは原文と訳文のペアでデータベース化されます。そのため、当然どちらか一方の言語データだけではメモリ化できません。
    さらに、過去に翻訳した資料の日本語版と英語版の構成が大きく異なるなど、日本語(原文)と英語(訳文)が対になっていない場合は、翻訳メモリの作成が難しくなります。また確定前の翻訳や、機械翻訳のアウトプット情報では、翻訳メモリの精度が落ちてしまいます。過去の翻訳結果を参考資料として提供する場合は、原文と訳文がセットであること、また、その資料が確定版であることが重要です。

    まとめ

    いかがでしたか? 翻訳や校正作業をする人にとって、CATツールはもはや欠かせない存在です。CATツールを使うことで、翻訳をする側だけではなく、翻訳を依頼する側にも多くのメリットがあります。翻訳センターでは人とツールを融合した作業体制で、翻訳作業の品質向上と効率化を目指しています。

    CATツールについては別のページでもご紹介しています。ぜひご参照ください。

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    とらんちゃん

    とらんちゃん

    「とらん」だけに「トランスレーション(翻訳)」が得意で、世界中の友達と交流している。 ポケットに入っているのは単語帳で、頭のアンテナでキャッチした情報を書き込んでいる。

    • 生年月日1986年4月1日(トラ年・翻訳センター創業と同じ)
    • モットー何でもトライ!
    • 意気込み翻訳関連のお役立ち情報をお届けするよ。

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