ハイコンテクスト文化とは?ローコンテクスト文化との違いや日本の特徴とビジネスリスクを解説

Index
海外でのビジネスや、外国人とのコミュニケーションで「なんとなく話が噛み合わない」と感じたことはありませんか?その原因は、言葉の壁だけではなく、文化的な背景の違いにあるのかもしれません。
日本は「言わなくてもわかる」とされるハイコンテクスト文化。一方多くの欧米諸国は、言葉ですべてを明確に伝えるローコンテクスト文化です。この違いを理解していないと、些細なことが大きな誤解やビジネス上のトラブルにつながる可能性もあります。今回は、これら2つの文化の違いを理解し、円滑なコミュニケーションにつながるヒントをお伝えします。

昔「目と目で通じ合う」っていう歌詞もあったけど、まさに日本特有の文化なんだね!
でも、日本以外の国では通用しないかもしれないから、海外でははっきりと言葉で伝えることが大事だね。
それぞれの文化の違いについて、一緒に学ぼう!
ハイコンテクスト文化とは?
「コンテクスト(context)」とは、英語で「文脈」を意味する言葉です。発言や文章の背後にあるつながりや流れの総体を指し、「言葉以外から読み取れる情報」と言い換えることもできます。そして「ハイコンテクスト/ローコンテクスト文化」という概念は、1970年代に文化人類学者のエドワード・T・ホール氏が、世界の言語コミュニケーションを「コンテクストの重視度」を軸に分類したことに端を発しています。
ハイコンテクスト文化とは、その名の通りコンテクストの重視度が高い文化のことで、言葉だけではなく文脈や背景、身振り手振りといった非言語的な要素から多くの情報を読み取ることを前提としたコミュニケーションスタイルを特徴とします。日本をはじめ、中国、韓国、タイ、ベトナムなどのアジアの国々は、ハイコンテクスト文化の典型とされています。「言わなくてもわかる」「空気を読む」といった暗黙の了解が成立しやすいことが、こうした文化の大きな特徴です。
一方、ローコンテクスト文化ではコンテクストの重視度が低く、言葉で明確に表現された内容が情報として重視されます。そのため、言葉以外の含みは伝わりにくいとされます。欧米諸国がその代表例であり、前提や背景を丁寧に説明する傾向があります。

日本のハイコンテクスト文化は世界トップクラス
では、なぜ日本はハイコンテクスト文化になったのでしょうか。その背景には、日本は周囲が海に囲まれた島国であることや、共同で農作業を行う生活が長く続いた歴史があります。人種や文化の多様性が少なく、限られた民族が生活する中で、言葉にしなくても相手の意図を察する「空気を読む」コミュニケーションが自然と育まれていったのです。そのため、日本のハイコンテクスト文化は世界でもトップクラスと言われています。
一方で、多種多様な民族で構成されるアメリカなどの国々では、誤解を避けるために明確なコミュニケーションが不可欠でした。このように、日本人が無意識に頼る「察する」コミュニケーションは、グローバル環境においては文化背景の異なる相手には伝わりにくく、誤解を生むことがあるため、異なる文化背景を持つ人々と接する際には、言葉で明確に表現する意識を持つことが大切です。
「ハイコンテクスト文化」と「ローコンテクスト文化」の違い
それでは、ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化にはどのような違いがあるのでしょうか?会話やメールでの具体例でその違いを見ていきましょう。
会話の特徴
「ハイコンテクスト」な会話例
ハイコンテクストな会話では、共通認識を持っていることを前提に、具体的な説明を省略して話が進む傾向があります。共通する判断基準や価値観、さらには相手の表情や声のトーンなどから、「言葉の裏にある本当の意図を読み取る」ことが特徴です。
ここで、とある会社の後輩と先輩の会話例を見てみましょう。

A社の例の件はいかがでしょうか?

部長が動いているよ、水面下で・・・

なるほど。では、こちらは静観ですね。
「例の件」という表現は、事情を共有している者同士だからこそ通じる言い回しですよね。具体的な内容は言葉にされていなくても、両者の間には共通認識があります。また、「部長が水面下で動いている」という先輩の返答に対し、後輩が「自分たちは動かない方がよい」と察するには、暗黙の了解や社内の力関係を踏まえた背景理解が前提となっています。
「ローコンテクスト」な会話例
一方、ローコンテクストな会話では、結論や事実を明確に言語化することが求められます。
とある会社の、上司と部下の会話例を見てみましょう。

B社に提案した、当社の新システム導入の件、進捗はどうなっている?

B社の件については、先方の吉田課長から昨日連絡がありました。現在、導入費用について社内で検討中とのことです。
5月18日までに回答をいただける予定ですので、回答があり次第、すぐに報告いたします。
この会話例では、上司の質問に対して、部下が「いつ」「誰から」「どのような連絡があり」「今後どうするか」といった具体的な進捗を明確に報告しています。このように、誰もが迷うことなく正確に理解できることがローコンテクストな会話の特徴です。

メールの特徴
「ハイコンテクスト」なメール例
会話だけでなく、メールや文書にも文化の違いが表れます。ここではメールにおける具体的な違いを見てみましょう。
- 件名
先日のご相談の件 - 本文
お世話になっております。
先日ご相談させていただいた件につきまして、一度お話させていただくお時間をいただけますでしょうか。
このメールは、「何の件で話したいか」という具体的な内容をあえて記載していません。送り手と受け手の間に共通の認識があることを前提とした書き方です。
「ローコンテクスト」なメール例
続いて、ローコンテクストなメールの一例をご紹介します。
- 件名
ABCプロジェクト 進捗確認会議 - 本文
おつかれさまです。
ABCプロジェクトの進捗確認のため、以下の通り会議を開催します。
日時:10月16日(木)10:00〜11:00
場所:第2会議室(本社3階)
議題:進捗報告、課題共有、次回ステップの確認
ご都合が悪い場合は、10月14日までにご連絡ください。
このメールは、目的・日時・場所・議題・期限などが明確に記載されており、受け手が文脈を推測する必要がありません。

文書の特徴
次に文書での違いについてもご紹介します。
「ハイコンテクスト」な文書例
- 関係者の共通理解を前提とした引き継ぎ書
- 関係者の共通理解を前提とした議事録
- 専門用語や知識を前提とした作業ドキュメント
ハイコンテクストな文書は、社内のルールや人間関係、これまでのやり取りを前提にしているため、細かい説明を省略する傾向があります。
「ローコンテクスト」な文書例
- 学術論文
- 契約書
- マニュアル
- 仕様書
一方、ローコンテクストな文書は、情報を明確かつ具体的に伝えることを重視しており、読み手が前提を把握していない場合でも理解できるよう、背景や条件などの説明が記されているのが特徴です。

相手に適切に伝えるうえで大切なこと
海外の人とコミュニケーションをとる際は、「ハイコンテクスト/ローコンテクスト」という異なる文化的な物差しが存在すること、そして日本が典型的なハイコンテクスト文化であることを理解したうえで、ローコンテクストな表現を意識することが大切です。
会話やメールだけでなく、文書においても、主語・目的・意図などの必要な情報を明確に言語化することを心がけましょう。例えば、「検討します」といった曖昧な表現は避け、結論や次のアクションをはっきりと伝えることが求められます。
こうした意識を持つことで、認識のずれによる誤解やトラブルを防ぎ、異文化間でも円滑なコミュニケーションを実現することができます。
英語でのコミュニケーションに役立つヒントは、以下の記事でもご紹介しています。
ハイコンテクスト文化にはビジネスリスクが潜んでいる
日本のようなハイコンテクスト文化における「言わなくてもわかる」という感覚は、グローバルビジネスにおいて大きなリスクを招くことがあります。「これくらいは理解しているだろう」と詳細な説明を省くと、文化の異なる相手との間で認識のずれが生じ、致命的な損失につながる可能性があるため、注意が必要です。
このすれ違いは、単なる誤解にとどまらず、契約内容の解釈の違い、プロジェクトの遅延、ひいては契約破棄や法的トラブルといった重大な問題に発展する可能性もあります。
特に、テレワークやオンライン会議が一般化した現在では、非言語的な情報が伝わりにくいため、はっきりと意図を言葉で伝えるローコンテクストなコミュニケーションが一層、重要になります。会議の目的や決定事項を明確に共有するといった取り組みが、情報の抜け漏れや誤解を防ぎ、ビジネスリスクの軽減につながります。


友人関係でもビジネスでも、お互いを正しく理解し合うことが大切だね!
相手や状況によってハイコンテクストとローコンテクストを上手く使い分けられるといいよね。
グローバルビジネスを円滑に進めるためには、本題を正しく伝えることに加え、その前段階のコミュニケーションスキルも欠かせません。そのひとつが「スモールトーク」です。
詳細を以下の記事で紹介していますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
まとめ
いかがでしたか?グローバルビジネスにおけるコミュニケーションの鍵は、文化の違いを理解することにあります。「ハイコンテクスト」な文化を持つ日本では、言葉の裏にある「本当の意図」を読み取ろうとする傾向があります。
一方、欧米諸国ではすべてを言葉で伝える「ローコンテクスト」なコミュニケーションが主流です。
この違いを理解し、明確で論理的なコミュニケーションを意識することが、誤解やトラブルの回避につながり、ビジネスを円滑に進める第一歩となるでしょう。
正確な翻訳はプロの翻訳会社へ
ビジネスにおいて、翻訳の正確さは信頼性を支える重要な要素です。
AI翻訳など便利な選択肢も増えていますが、セキュリティリスクや誤訳の懸念もあるため、専門性の高い文書や正確さが求められるビジネス翻訳では、プロに頼むと安心です。
翻訳センターは、医薬・特許・工業・金融・法務などの専門分野をはじめ、ビジネス文書や一般的な文書も幅広く対応しています。
まずはお気軽にご相談ください。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
翻訳センター ブログチーム

とらんちゃん
「とらん」だけに「トランスレーション(翻訳)」が得意で、世界中の友達と交流している。 ポケットに入っているのは単語帳で、頭のアンテナでキャッチした情報を書き込んでいる。
- 生年月日1986年4月1日(トラ年・翻訳センター創業と同じ)
- モットー何でもトライ!
- 意気込み翻訳関連のお役立ち情報をお届けするよ。
New
新着記事

2025.9.24
- 翻訳あれこれ

2025.9.10
- お役立ち

2025.8.27
- 翻訳あれこれ

2025.8.13
- イベントレポート
お問い合わせ窓口
(受付時間:平日10:00~17:00)
新規のお問い合わせ、サービスについてのご質問など、お気軽にお問い合わせください。