英語論文の翻訳、ツールと翻訳会社の違いは?選び方とおすすめ情報を紹介
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最新技術や研究成果の多くは英語で発表されることから、情報をいち早く得るために、英語の論文を読む機会もありますよね。概要の把握、事例の調査、根拠データの収集、背景理論の理解など、英語論文を読む目的はさまざまですが、英語力が高い方であっても、限られた時間で英語論文を精読し、内容を的確かつ深く理解することは容易ではありません。
さらに、英語で論文を投稿・発表する場面では、日本の研究者が言語の壁を乗り越えるために多くの時間やコストを費やしている現状があります。英語力に問題がなくても、投稿準備に十分な時間が確保できず、結果として、発表の機会を逃してしまうというケースもあるようです。
ツールの利用や翻訳会社への外注で論文翻訳の負担を減らすことができるよ。
目的や用途に応じて翻訳方法を使い分けよう!
英語論文翻訳の特徴とは?
論文は、専門家や研究者を読者層とし、専門的で新規性の高い内容を決められたフォーマットで記述した文書です。その論文の翻訳では、専門用語の正確な翻訳、簡潔で客観的な表現、時制の厳密な整理、適切な引用文献の記載、投稿規定・ガイドラインの遵守といった、特有の対応が求められます。これらに的確に対応するには、高度な翻訳能力のみならず、学術論文特有の構成や表現様式に関する深い知識が不可欠です。
専門用語
学術分野ごとに定義された専門用語を正しく翻訳することは、論文翻訳において大変重要です。ライフサイエンス分野やAI・データサイエンス分野の論文では、専門用語のみならず、複雑な表現や言い回しが頻出します。さらに同じ単語でも分野によって訳語が異なるケースもあり、十分な文脈理解が求められます。
表現・時制
英語論文では客観的で簡潔な表現が重視されるため、日本語の論文を英語に翻訳する際には、日本語では時に冗長になりがちな曖昧表現を整理し、要点を明確にしたうえで端的に訳すことが重要です。このように論文の英訳では、日本語特有の曖昧さや婉曲表現をなくすといった、論理構造を明確にする配慮が必要です。
また、日本語は主語や時制を省略しても文脈で意味が伝わる言語です。そのため、翻訳時には、省略された主語を補完することや、過去の研究は過去形、現在の事実は現在形といった時制の厳密な書き分けが求められます。
引用・参考文献の形式
英語論文の執筆時は、APAスタイル、シカゴスタイル(Chicago)、バンクーバースタイル(Vancouver)などに代表される、各分野の公認スタイルへの準拠が求められます。日本語論文で一般的に用いられる引用方式をそのまま適用することは、国際的なジャーナルへの投稿では不適切とされるため、十分な留意が必要です。
代表的な引用スタイルの例:
| 引用スタイル | 主な利用分野 |
| AMA(American Medical Association) | 医学、薬学、臨床研究 など |
| APA(American Psychological Association) | 心理学、教育学、社会科学全般 など |
| Chicago(Chicago Manual of Style) | 歴史学、人文学、社会科学、書籍出版 など |
| CSE(Council of Science Editors) | 生物学、環境科学、農学 など |
| MLA(Modern Language Association) | 文学、言語学、文化研究、人文学 など |
| Vancouver | 医学・生命科学 など(国際的に広く採用) |
投稿規定・ガイドライン
投稿規定とは、学術雑誌や学会が投稿者に対して定める、論文投稿に関わる詳細なルールです。取り扱うテーマや著者資格、原稿の構成・形式や提出方法などが含まれ、各雑誌・学会によって内容が異なります。そのため、投稿目的で翻訳をする場合は、投稿先の規定にあわせた対応が必須です。
代表的な投稿規定やガイドラインをいくつか紹介します。
IEEE Author Guidelinesは、電気・電子工学、通信、情報工学系分野における標準的なガイドラインです。IEEEは、Institute of Electrical and Electronics Engineersの略称で、人類社会の有益な技術革新に貢献する、世界最大の専門家組織です。
Springer Nature社やElsevier社といった学術出版社による投稿規定は、自然科学・理学・工学・医学・社会科学系など幅広い対象分野をカバーしています。ただしSpringer Nature社は、ジャーナルごとに投稿規定が異なるため、必ず投稿予定のジャーナルで「Instructions for Authors」を確認することが重要です。
学術出版における倫理問題に対応するため、国際的な非営利組織COPE(Committee on Publication Ethics:出版倫理委員会)は、著者・編集者・査読者・出版社が守るべき倫理基準に関するガイドラインを提供しています。
COPE(Committee on Publication Ethics:出版倫理委員会)(外部リンク)
また、医学論文では、ICMJE(International Committee of Medical Journal Editors:医学雑誌編集者国際委員会)による統一投稿規定が世界標準となっています。
ICMJE(International Committee of Medical Journal Editors:医学雑誌編集者国際委員会)(外部リンク)
このように多様な投稿規定を遵守することは、論文翻訳の大きな特徴です。投稿支援パッケージ、投稿規定に沿ったレイアウト調整、カバーレター作成、査読対応サポートなどのサービスを提供している翻訳会社もあります。プロに任せることで、論文投稿に関わる煩雑な作業が効率化できるため、研究者は本来の研究に集中できます。
目的別 英語論文の翻訳手段
ここでは、専門用語や情報量の多い論文の翻訳手段について、ご紹介します。
目的別に「無料ツールや生成AIの利用」、「法人向けの自動翻訳サービスの契約」、「翻訳会社への依頼」という選択肢があります。それぞれについて、解説していきます。
みんなはどんな目的で論文翻訳をすることが多いかな?
目的別の翻訳手段を一緒に見てみよう!
【目的1|内容を把握する・要約する】無料の「機械翻訳ツール」や「生成AI」を利用
内容把握や要約が目的であれば、DeepLやGoogle翻訳といった無料の翻訳ツールがおすすめです。翻訳スピードも速く、わずかな時間で大量のテキストを翻訳できる点もメリットの一つです。
さらに、生成AIは、論文の要点抽出や簡潔なまとめの作成に有効で、「概要把握」や「ざっくりした要約」など、論文の一次理解に活用できます。
一方で、いくつか注意点もあります。無料ツールは入力データが外部サーバに送信される可能性があるため、未公開論文や機密情報を扱う場合は情報漏洩のリスクがあります。
また、利用できる文字数に制限がある場合があり(DeepLの無料版では一ヵ月に50,000文字までなど)、長文の翻訳は注意が必要です。
さらに、投稿規定や学術スタイルには非対応ですので、翻訳はできても、ジャーナルのフォーマットや引用スタイルの調整には対応していません。
生成AIの場合は、重要なデータや条件を拾い切れないことがあります。生成AIの要約はあくまで参考情報と捉え、対象分野の知識と論理的検証をもとに内容を精査しましょう。
【目的2|他者と共有する】法人向けの有料「AI自動翻訳サービス」を契約
内容把握だけでなく、参照資料や根拠データとして論文を引用する、報告書の裏付けデータとして使うケースなど、論文を他者と共有する場合は、法人向け有料サービスの利用がおすすめです。
無料翻訳ツールと法人向け有料サービスの最大の違いは、セキュリティと専門性です。Google翻訳やDeepLなどの無料ツールは、手軽な反面、入力した文章が外部サーバで学習に利用される可能性を完全に排除することはできません。
一方、Mirai Translator®のような法人向け有料サービスは、暗号化通信や契約下でのデータ保護を徹底しており、情報漏洩の心配がありません。
さらに、法人向け有料サービスでは分野特化モデルの利用や専門用語をカスタム辞書として登録することもできるため、医学・工学など高度な専門分野でも精度の高い翻訳が可能です。コストはかかりますが、他者と共有するに足る信頼性と安全性を重視する場合、有料サービスは有力な選択肢です。
Mirai Translator® | 機械翻訳クラウドサービス
【目的3|投稿する】プロの専門家による「翻訳サービス」に依頼
学術論文を投稿する場合、プロの専門家による翻訳サービスを利用することが最適解です。最大のメリットは、専門分野に精通した翻訳者が、論文特有の構造や用語を正確に訳し、ジャーナルの投稿規定や学術的な文体に沿った高品質な論文に仕上げてくれる点です。また、サービス利用時に機密保持契約を結ぶため、未公開データの安全性も確保されます。
一方で、デメリットは費用と納期です。依頼から納品まで一定の時間を要するため、計画的なスケジュール管理が必要です。しかし、採択率を高めたいのであれば、専門翻訳サービスは一考の価値があります。
翻訳ツールや生成AIといった効率化ツールを上手に活用しながらも、最終的な品質の担保には、翻訳のプロによる支援が不可欠です。論文翻訳や投稿準備でお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
英語論文の翻訳を翻訳会社に依頼する3つのメリット

研究の価値や成果を適切に伝えるためには、学術論文の翻訳において高い正確性が欠かせません。専門的な内容や特有の用語が多い論文では、無料ツールのみでは十分な品質を確保できない場合があります。そこで、翻訳会社に依頼する3つのメリットについて解説します。
メリット1 :専門分野に対応した高品質な翻訳
翻訳会社に依頼するメリットの一つは、専門知識を持つ翻訳者が対応することです。彼らは最新の研究動向や業界用語にも精通しており、単なる直訳ではなく、研究領域のニュアンスや意図を正確に伝える翻訳を提供します。さらに、社内でのダブルチェック体制や品質保証プロセスが整っているため、誤訳や用語の不統一といったリスクを最小限に抑えられます。翻訳センターでは、再生医療や創薬、量子技術、脱炭素化、再生可能エネルギーなど、幅広い研究テーマでの対応実績があります。
メリット2 :投稿支援・査読対応
もう一つの大きなメリットは、翻訳だけでなく投稿支援や査読対応のサポートも受けられる点です。ジャーナルごとのフォーマット調整や規定に合わせた修正、さらには査読者からのコメントへの対応まで、専門スタッフがきめ細かくバックアップします。これにより、研究者は学術雑誌への投稿に集中することができ、結果として採択率向上にもつながります。
メリット3 :厳格なセキュリティ体制による機密保持
翻訳会社では、研究データや未発表論文など、機密性の高い情報を取り扱うため、情報漏洩リスクを最小限に抑える体制が整備されています。秘密保持契約の締結や徹底した情報管理プロセスにより、安心して翻訳を依頼できます。
論文翻訳後の校正方法と手順
校正は、単なる訳文の修正にとどまらず、学術的な正確性や論理性の確保、さらにはジャーナルの投稿規定への適合を確認する重要なプロセスです。まず、翻訳文と原文を照合し、意味の齟齬や誤訳がないかを確認します。次に専門用語や表現の一貫性をチェックします。さらに、論文の構成や引用形式、図表のラベルなどが各ジャーナルのガイドラインを遵守しているかも重要なポイントです。
分野ごとに必要な専門知識は異なるため、校正にはできるだけ専門分野に精通した翻訳者やレビュアーの割り当てが推奨されます。また、自然な英語表現や一貫性の確保を目的に、当該分野の知識を持つ英語ネイティブによる校閲を組み合わせることも効果的です。
校正時に気を付けたいポイント
- 専門用語の誤訳
- 冗長な日本語構文の直訳になっていないか
- 受動態と能動態の使い分け
- 冠詞(a/the)と単複数の誤用
- 時制の適切な使い分け(MethodsやResultsは過去形、Discussionは現在形など)
- 略語の初出定義(例:Polymerase Chain Reaction (PCR))
- 不自然な接続詞
採択率を高めるためのポイント
- ジャーナルのガイドライン遵守(構成・スタイル・文字数)
- 分野専門のネイティブ校閲
- 論理の明確化(段落構成・主張の一貫性)
- 図表・キャプションの英語精度
英語論文の翻訳料金はいくらかかる?
学術論文の翻訳料金は一律ではありません。分野や専門性、分量、目的(投稿用・参考用など)、さらに投稿先の要件によっても大きく変わります。
正確な料金を知りたい場合は、見積もりを取ることをおすすめします。
まとめ
いかがでしたか。専門性・正確性・機密性が求められる論文翻訳では、ツールの特性を理解したうえで、翻訳の目的にあった方法を選択することが重要です。ツールを利用する、プロへ依頼する、など、ご自身の状況に合った最適な選択をしましょう。
翻訳センターでは、さまざまな分野の論文翻訳を取り扱っており、豊富な実績があります。専門性の高い論文翻訳をアウトソーシングする際はプロに任せると安心です。まずはお気軽にご相談ください。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
※記載の会社名、製品名は各社の登録商標または商標です。
※株式会社翻訳センターはMirai Translator® の正規代理店です。
翻訳センター ブログチーム
とらんちゃん
「とらん」だけに「トランスレーション(翻訳)」が得意で、世界中の友達と交流している。 ポケットに入っているのは単語帳で、頭のアンテナでキャッチした情報を書き込んでいる。
- 生年月日1986年4月1日(トラ年・翻訳センター創業と同じ)
- モットー何でもトライ!
- 意気込み翻訳関連のお役立ち情報をお届けするよ。
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