AI翻訳(機械翻訳)とは?仕組みやメリット・デメリット、翻訳会社が教える効果的な活用法

2026.1.14

  • 翻訳あれこれ
AI翻訳(機械翻訳)とは?仕組みやメリット・デメリット、翻訳会社が教える効果的な活用法

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    近年、AI技術の急速な進化は多くの分野に革新をもたらしており、翻訳業界も例外ではありません。特に、「AI翻訳(機械翻訳)」は、翻訳の業務効率の向上に大きく貢献しています。しかし、高い精度を誇る一方で、ビジネスの現場で求められる正確性やセキュリティの確保など、いくつかの課題も残されています。

    本記事では、AI翻訳の仕組みからメリット・デメリット、活用シーン、そしてプロの翻訳会社との連携の重要性までを解説し、状況に応じた最適なAI翻訳活用法をご提案します。

    とらんちゃん

    知ってる?
    機械翻訳の研究は1950年頃からスタートしていて、実は長―い歴史があるんだ。
    今ではあたりまえになったAI翻訳が、どのように進化して、
    どう使うのが効果的か、とらんと一緒に見ていこう!

    AI翻訳(機械翻訳)とは?

    AI翻訳(機械翻訳)とは、ある言語のテキストを別の言語へ自動的に翻訳する技術またはサービスを指します。もともとは「自動翻訳」や「機械翻訳」と呼ばれていましたが、2010年代後半から、AIの中核技術であるニューラルネットワークを活用した機械翻訳の利用が主流となったため「AI翻訳」という呼び方が広まりました。

    AI翻訳は訳文を自動生成するという点でChatGPTに代表される「生成AI」と共通点があり、仕組み自体も似ていますが、翻訳専用にチューニングされているか、汎用的な対話型かという点で活用シーンが異なります。本記事では、翻訳に特化して開発された「AI翻訳」について解説します。

    AI翻訳の仕組みは?

    AI翻訳の仕組みは、「ルールベース型」「統計ベース型」「ニューラルネットワーク型」の3つに分類されます(表1)。現在のAI翻訳はニューラルネットワーク型が主流ですが、その発展の過程を知ることで、なぜ現在のAI翻訳が画期的なのか、より深く理解できます。

    表1:AI翻訳の変遷と特徴
    種類 特徴 年代
    ルールベース
    機械翻訳
    (RBMT)
    人が事前に文法規則と単語辞書を設定し、ルールに基づき機械的な翻訳を行う。ぎこちない訳文で、新語やルールの更新に多大な労力がかかる。 1970~90年代
    統計的
    機械翻訳
    (SMT)
    大量の対訳データを学習し、統計的な確率に基づいて適切な単語やフレーズに置き換えて翻訳を行う。学習に多くのデータが必要であり、精度的にも課題が残る。 1990~2010年代
    ニューラル
    機械翻訳
    (NMT)
    ニューラルネットワーク、ディープラーニング技術を用い、流暢な翻訳を出力できる。学習を継続しながら翻訳品質を向上させる。 2010年代~

    ルールベース機械翻訳

    ルールベース機械翻訳(RBMT)は、「文法規則」と大量の「単語辞書」を人間が手動で設定し、そのルールに基づいて文章を機械的に翻訳する仕組みです。直訳タイプとも呼ばれ、AIの学習データが少なくても一定の精度を保てるというメリットがありますが、文法ルールが大きく異なる言語間では対応が難しく、口語や慣用的な表現の翻訳には不向きです。また、新語やルールのアップデートに膨大な手間がかかる点が大きな課題です。

    統計的機械翻訳

    統計的機械翻訳(SMT)は、大量の原文と訳文のペア(コーパス)を学習し、蓄積されたデータから「この単語の次にはこの単語が来る確率が高い」という統計モデルに基づいて、単語やフレーズを置き換えて翻訳を行います。意訳タイプとも呼ばれ、ルールベース型よりも翻訳精度が向上し、口語や慣用表現にも対応できるようになりました。しかし、十分な学習データが必要であり、文法構造が大きく異なる言語間での翻訳は依然として難しいという課題が残りました。

    ニューラル機械翻訳

    ニューラル機械翻訳(NMT)は、人間の脳神経の仕組みを模したニューラルネットワークとディープラーニング技術(深層学習)を活用した最新のAI翻訳で、従来のRBMTSMTが課題としていた「流暢性」が劇的に改善されていることが特徴です。2016年にGoogleがニューラルネットワーク型の「GNMT」を発表したことをきっかけに、急速にビジネス利用が広まりました。現在ではこのニューラル機械翻訳がAI翻訳の主流となっており、多くの翻訳サービスで採用されています。

    AI翻訳のメリット

    AI翻訳の主なメリットは、「スピード」、「品質」、「コスト」の3つに集約されます。用途や状況に応じてAI翻訳のメリットをうまく活用することで、翻訳業務の大幅な効率化が期待できます。

    1. 【時間】圧倒的な翻訳スピードと複数ファイルの一括処理

    AI翻訳の最大のメリットは、その圧倒的なスピードです。大量のテキストやドキュメントを短時間で処理できます。ファイル翻訳機能(ファイルをシステムに読み込ませ、数回のクリックで翻訳済みファイルを出力する仕組み)を使えば、複数ファイルを一括で翻訳することもできます。これにより、急ぎの翻訳が必要な場面でも迅速に訳文を用意でき、製品の海外展開や多言語での情報発信のスピードを大幅に加速させ、ビジネスチャンスの拡大に貢献します。

    2. 【品質】安定したアウトプット

    AI翻訳は、対訳(原文と訳文のセット)を学習データとし、翻訳に特化して開発されているため、出力される訳文が安定しています。人による確認やポストエディットは必要ですが、出力の安定性は品質管理のうえで非常に重要です。また、自社独自の専門用語などを登録し、文書全体の用語を統一することも可能です。

    3. 【コスト】見えない社内コストの削減

    高精度なAI翻訳の登場により、英語をはじめとする外国語資料の理解や、テキストを使ったコミュニケーションの負担は大幅に軽減されました。AI翻訳は、グローバルビジネスの日常業務における生産性向上に貢献し、見えにくい社内コストの削減を実現します。

    AI翻訳のデメリット

    多くのメリットがあるAI翻訳ですが、翻訳品質やセキュリティの面で注意すべきデメリットやリスクも存在します。

    1. 文書全体の表現統一が限定的

    AI翻訳の多くは1文単位で処理をしますが、最新のモデルでも依然として離れた文との整合性が課題となる場合があります。企業独自の専門用語やブランドメッセージといった表現を統一するために、翻訳の現場ではスタイルガイドを整備することがありますが、AI翻訳では、スタイルガイドのような細かな表記ルールやニュアンスの指定を反映させることは難しい場合があります。

    2. 誤訳・訳抜けリスク

    AI翻訳の精度は向上していますが、完璧ではありません。特に複雑で長い文や専門的な内容では、誤訳や訳抜け、さらには文脈に合わない単語に置き換わる「流暢な誤訳」が生じるリスクがあります。ビジネスにおける重要な文書での翻訳ミスは、大きなトラブルにつながる可能性があるため、人による確認作業(ポストエディット)は不可欠です。

    ポストエディットについてはこちらの記事で解説しています。ぜひご覧ください。

    ポストエディットってなに?機械翻訳や人手翻訳との違い

    3. セキュリティリスクを考慮する必要がある

    AI翻訳サービス、特に無料ツールを利用する際には、セキュリティ上のリスクを十分に考慮する必要があります。多くの無料サービスは、翻訳精度向上のために入力データを二次利用する旨を規約に明記していることから、機密情報や個人情報が外部に流出するリスクがあります。過去には、入力した機密データが意図せずWEB上に表示された事案も報告されています。ビジネスで活用する際は、出入力データを二次利用せず、セキュリティ対策が施された法人向けの有料サービスや、オンプレミス環境などを選ぶことが賢明です。

    とらんちゃん

    ものすごく進化したAI翻訳だけど、苦手なこともあるんだね。
    では、どういう作業で使うのがよいのかな?

    AI翻訳が向いている作業

    どんなツールにも言えることですが、AI翻訳にも得意・不得意があります。その特性を踏まえ、適切なシーンで活用することで、業務効率を最大限に引き上げることができます。

    文構造・論理構成が明確な文書

    AI翻訳は、マニュアルや仕様書、定型メールなど、表現が一定で繰り返しが多い定型文書の翻訳を得意としています。特に文構造がしっかりしており、文脈が明確な文章では、高い訳出精度が期待できます。また、専門分野の良質な対訳を学習させることで、技術文書や専門的な文章でも、安定した翻訳品質を実現することが可能です。

    即時性が求められる場合

    AI翻訳は、即時性が求められる場面での活用に適しています。例えば、海外ニュースの概要把握や競合情報のクイックチェックなど、品質よりもスピードが優先される情報収集のための概訳に最適です。また、WEB会議や対面での窓口業務など、英語をはじめとした外国語でのコミュニケーションが必要な場面で、音声をリアルタイム翻訳するツールも多く開発されています。

    大量のドキュメントを扱う場合

    大量のドキュメントやテキストデータを処理する場合、AI翻訳は圧倒的な効率を発揮します。多くのAI翻訳システムやツールは、WordExcelPowerPointPDFなどの複数ファイル形式に対応し、ある程度レイアウトを保持したまま一括翻訳できる機能を提供しています。これにより、翻訳後の確認作業(ポストエディット)の手間も軽減され、翻訳プロジェクト全体の時間とコストを大幅に節約できます。

    AI翻訳・翻訳会社:シーン別使い分け

    AI翻訳をうまく活用するには、AIの得意・不得意を理解し、人の力を組み合わせるハイブリッド戦略が不可欠です。しかし、AI翻訳の導入コストに加え、導入後の環境整備、人手による品質管理業務には大きな負担がかかるため、AI翻訳と翻訳会社への依頼とを使い分けている企業も多いのが実情です。

    どのように使い分けているのか、シーン別に紹介します。

    翻訳対象文書の用途や量に応じた使い分け

    品質よりも緊急性やコスト効率が重視されるケース、あるいは高い精度を必要としない軽微な用途(内容把握やメール対応など)では、AI翻訳の活用が効果的です。例えば、WEBサイトやアプリの多言語化においては、基本的な翻訳作業はAIに任せることでコストを抑制できます。
    一方、企業理念や社長メッセージ、キャッチコピーなど、ニュアンスやブランドトーンの維持が重要な文章を扱う広報・マーケティング部門では、翻訳のプロによる人手翻訳が選ばれることがあります。
    さらに、翻訳対象のファイル数が非常に多い場合、ファイル間での用語統一やファイル管理の煩雑さを考慮し、翻訳会社に一括依頼するほうが効率的と判断されるケースもあります。
    このように、翻訳のボリュームや品質要件に応じて、コストを意識した使い分けをすることが重要です。

    社内でAI翻訳の正確性を確認できない場合

    AI翻訳は人による確認作業(ポストエディット)が必須ですが、AI翻訳の内容確認ができる人材が社内におらず、翻訳会社を利用するケースがあります。仮に社内リソースが確保できたとしても、確認作業にかかる負担が増大すれば品質にも影響するリスクがあるため、特に専門的で正確性が求められる文書の翻訳では、最初からプロの翻訳会社に依頼することをおすすめします。翻訳会社を活用することで、社員はコア業務に集中しつつ、安定した翻訳品質を確保することができます。

    AI翻訳活用を前提とした品質管理体制の構築

    AI翻訳の運用を定着させるには、単なるツール導入ではなく、品質管理体制の構築が必要です。翻訳会社は、機密情報を扱う際のセキュリティが担保された翻訳ツールの選定支援、用語集とスタイルガイドの作成・運用支援、そしてAIと人の融合を前提とした最適なワークフローの設計など、総合的なサポートを提供します。翻訳会社を活用することで、AIのスピードとコスト効率を活かしつつ、企業に求められる高品質な翻訳を安定的に実現できるようになります。

    AI翻訳に関するよくある質問

    最後に、AI翻訳の導入を検討されている企業の皆さまからいただくご質問にお答えします。

    AI翻訳ツールの選び方は?

    AI翻訳ツールを選ぶ際は、以下の5つのポイントに着目するといいでしょう。

    1. 翻訳精度(分野別エンジンの有無)
    2. 機能(対応言語ペア、辞書機能、ファイル翻訳といった機能が自社の利用シーンにマッチしているか)
    3. 使いやすさ(直感的な操作画面、カスタマイズの可否)
    4. セキュリティ(データの二次利用の有無)
    5. コスト(料金体系)

    特に正確性が求められる文書の翻訳では、用途や分野に特化した翻訳エンジンを選定・活用することが重要です。

    おすすめのAI翻訳ツールは?

    無料のAI翻訳ツールは、翻訳データが二次利用されるセキュリティリスクがあるため、企業で機密情報を含む文書に活用することは避けるべきです。ビジネスで利用する際は、DeepL ProMirai Translator®SYSTRANなど、セキュリティが担保された有料の翻訳エンジンや、翻訳会社が提供するセキュアな環境が推奨されます。

    AI翻訳の欠点やリスクは?

    AI翻訳の主な欠点とリスクは、翻訳精度が完璧ではないことによる誤訳・訳抜けの可能性、導入と運用にかかるコスト、そして無料ツールの利用に伴うセキュリティ上の情報漏洩リスクです。これらのリスクを最小限に抑えるためには、人による確認作業(ポストエディット)が必須であると同時に、トータルでの費用対効果や情報の取り扱いに対する見極めも必要になります。

    まとめ

    いかがでしたか。
    ニューラル機械翻訳(NMT)の進化により、AI翻訳は、翻訳の高速化やコスト削減という大きなメリットをもたらしました。しかし、専門的な文章やニュアンスが絡む文章では誤訳や表現の不統一といったリスクが伴い、機密情報を扱う際にはセキュリティの確保が最重要課題となります。AI翻訳を効果的に活用するには、AIの限界を正しく理解し、AIに不足している部分を人の専門的な力で補う品質管理体制の構築が不可欠です。専門性の高い文書や正確さが求められるビジネス翻訳では、安定した品質を提供できるプロに依頼するのが確実です。

    翻訳センターは、医薬・特許・工業・金融・法務などの専門分野において、テクノロジーと人の専門性を組み合わせた翻訳サービスで、企業のグローバル展開を支援しています。まずはお気軽にご相談ください。


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    翻訳センター ブログチーム

    とらんちゃん

    とらんちゃん

    「とらん」だけに「トランスレーション(翻訳)」が得意で、世界中の友達と交流している。 ポケットに入っているのは単語帳で、頭のアンテナでキャッチした情報を書き込んでいる。

    • 生年月日1986年4月1日(トラ年・翻訳センター創業と同じ)
    • モットー何でもトライ!
    • 意気込み翻訳関連のお役立ち情報をお届けするよ。

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