逆翻訳(バックトランスレーション)とは?やり方を例文とともに解説

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重要文書や専門性の高い文書を翻訳する際、わずかな表現の違いが大きな問題につながることもあり、翻訳の正確さに不安を感じる場面も少なくありません。
「原文の内容を損なわずに正確に翻訳できているか、客観的に確認できる方法があればいいのに・・・」と思ったことがある方も多いのではないでしょうか。
そんなときに役立つのが「逆翻訳(バックトランスレーション)」という手法です。この記事では、逆翻訳とは何か、例文付きでわかりやすくご紹介します。

専門性が高く、ミスが許されない文書を翻訳する時は、工程に逆翻訳を取り入れることで仕上がりの安心感がぐっと高まるよ!
品質チェックの強い味方だね!
逆翻訳(バックトランスレーション)とは?
「逆翻訳」とは、一度翻訳した文章を元の言語に再び翻訳し直すことを指します。
これは主に翻訳の品質を確認・検証する目的で使われる手法です。
たとえば、日本語の原文を英語に翻訳し、その翻訳文を別の翻訳者や機械翻訳によって日本語に翻訳し直します。
この逆翻訳文と元の日本語原文を比較することで、翻訳による意味のズレや誤訳の可能性を客観的に確認することができます。
逆翻訳の目的

逆翻訳の最大の目的は、翻訳文が原文の内容を正確に伝えているかどうかを検証することです。特に、誤訳やニュアンスのズレが重大な影響を及ぼす可能性のある文書では、翻訳の品質を担保するための重要なステップとなります。
また逆翻訳は、翻訳の品質検証以外にもさまざまな目的で活用されます。
【逆翻訳の目的】
- クライアントや社内関係者、監査機関への品質証明
- 機械翻訳後の品質検証
- 多言語展開前の基準言語(例:英語)の精度確認
- 多言語翻訳後のレビュー
多言語翻訳に取り組む際のポイントや注意点については、こちらの記事でも紹介しています。
逆翻訳の手順

逆翻訳は、ただ翻訳し直すだけではありません。具体的には、以下の手順で行います。
- 逆翻訳の実施:別の翻訳者(または機械翻訳)が、原文を参照せずに翻訳文を元の言語に訳し直します。
- 比較と検証:訳し直した文章と原文を比較し、意味のズレやニュアンスの違いがないか検証します。
- 翻訳文の修正:検証結果を基に、必要に応じて元の翻訳文を修正します。
また、逆翻訳には、人手で行う方法と機械翻訳を使う方法があります。目的や文書の重要度に応じた、適切な方法を選ぶことが大切です。
- 人手による逆翻訳
専門分野の文書や、正確性が特に求められる文書では、プロの翻訳者による逆翻訳が適している場合があります。
人手による逆翻訳では、文脈や専門用語も丁寧に確認して翻訳するため、より精度の高い品質検証が可能です。 - 機械翻訳による逆翻訳
気軽に逆翻訳を試してみたい場合は、機械翻訳を活用するのも一つの方法です。
近年では、逆翻訳機能を備えた機械翻訳も登場しており、初期段階のチェックや大量文書のスクリーニングにおいて、スピードとコストの面で非常に有効です。
ただし、無料の機械翻訳エンジンを利用する場合は注意が必要です。翻訳した内容が二次利用される可能性があるため、ビジネス文書や機密情報を扱う場合には、有料版の利用や翻訳会社への依頼など、セキュリティ面に配慮した翻訳環境の活用をおすすめします。
ここからは、具体的な逆翻訳の流れを各分野の文書を例にご紹介します。
事例1|法務分野
【契約書の例】
- 原文(日本語):本契約は、両当事者の書面による合意がない限り、変更することはできない。
- 翻訳文(英語):This agreement may not be modified without the consent of both parties.
- 逆翻訳文(日本語):本契約は、両当事者の同意なしに変更することはできない。
【確認ポイント】
- 「書面による合意」が「同意」と訳されており、文書化の要件が抜けている(訳抜け)。
法務文書では、一つの単語に対する法的解釈の違いが、契約の有効性や権利・義務に大きな影響を及ぼすことがあります。上記を例とすると、「口頭の同意」と「書面による合意」は法的拘束力が異なるため、こうした誤りを見逃すと、予期せぬトラブルにつながる可能性もあります。
- 修正後の翻訳文(英語):This agreement may not be modified without the written consent of both parties.
事例2|医薬分野
【添付文書の例】
- 原文(日本語):13歳以上の者については、0.5mLを皮下に、1回又はおよそ1~4週間の間隔をおいて2回注射する。
- 翻訳文(英語):For individuals aged 13 years and older, administer 0.5mL subcutaneously either once or twice every 1 to 4 weeks.
- 逆翻訳(日本語):13歳以上の人には、1〜4週間ごとに1回または2回、0.5mLを皮下注射する。
【確認ポイント】
- 投与タイミングや回数の記載が正しいか
- 数値(年齢や投与量)の誤りがないか
逆翻訳から、「1〜4週間の間隔をあけて最大2回投与する」という元の意味が、「1〜4週間ごとに繰り返し投与する」という定期的な投与の意味に変わってしまっていることがわかります。翻訳文は自然な英語表現ですが、意味が全く異なり治療に大きく影響してしまいます。逆翻訳を活用すると、このように訳文のみを読むと問題ないと判断されかねない重大な誤りを検知することができます。
- 修正後の翻訳文(英語):For individuals aged 13 years and older, administer 0.5 mL subcutaneously once or twice, with an interval of approximately 1 to 4 weeks between doses.
逆翻訳のメリット・デメリット
次に、逆翻訳のメリットとデメリットをご紹介します。メリットだけでなく、デメリットもしっかり理解したうえで、目的や状況に応じて適切に活用すれば、逆翻訳は非常に心強い品質管理の味方になります。
【メリット】
- 致命的な誤訳を防ぎ、品質リスクを回避できる
- 法的・倫理的リスクの未然防止に有効
- 社内でのレビュー体制改善に役立ち、品質管理体制の強化につながる
【デメリット】
- 翻訳工程が増えるため、時間と予算が必要
- 逆翻訳者のスキルや利用する機械翻訳エンジンにより検証精度が左右される
- 文書種類によっては効果が限定的
逆翻訳に適した分野
翻訳の正確性が特に求められる分野では、わずかな言い回しの違いが大きなリスクにつながることがあります。
以下に挙げる分野は、誤訳によるリスクが高いため、逆翻訳による検証が非常に有効です。
- 医薬・治験分野
患者さんの安全や倫理的配慮が求められる文書では、誤訳が直接的な健康被害や倫理違反につながる可能性があります。 - 法務分野
文言の解釈が法的効力に直結する文書では、言い回しの違いが重大なトラブルを招くことがあります。 - 特許・技術分野
特許請求項や技術仕様書では、用語の一貫性と技術的な正確性が重要です。逆翻訳を取り入れることで、権利範囲の誤認や技術的主張の弱体化を未然に防ぐことができます。 - 金融・コンプライアンス分野
投資家や監査機関に向けた文書では、誤訳が誤解を招き、投資判断や監査結果に影響が生じる可能性があります。
逆翻訳が有効な文書例
では、具体的にどのような文書で逆翻訳が活用されているのでしょうか。
逆翻訳が特に効果を発揮する文書の代表例を見てみましょう。
【逆翻訳が有効な文書例】
- 医薬・治験分野:治験説明文書、同意取得文書
- 法務分野:契約書、利用規約、法的通知文
- 特許・技術分野:特許請求項、技術仕様書
- 金融・コンプライアンス分野:目論見書、IR資料、財務報告書、規制対応文書、監査資料
逆翻訳が適さない分野
逆翻訳は非常に有効な手法ですが、すべての分野に適しているとは限りません。
特に、原文の意図を汲み取り、読者に伝わるよう意訳することが求められる分野では、逆翻訳がかえって混乱を招く可能性があるため、注意が必要です。
【逆翻訳が不向きな分野例】
- マーケティングコピー、広告文
- WEBサイトやSNSのコンテンツ
- 小説・エッセイ・詩などの文学作品
- 映像字幕・吹き替え台本

想像力や表現力が重視される文書だと、逆翻訳による「意味の一致」よりも“自然さ”や“伝わりやすさ”がポイントになるんだね!
【法人向け】逆翻訳を検討している担当者の皆さま

逆翻訳で翻訳の品質を確認したい一方で、「時間やコストがかかる」「人手が足りない」といったお悩みはありませんか。
翻訳センターでは、こうした課題を解決するため、機械翻訳を活用した逆翻訳サービスを提供しています。
【翻訳センターの逆翻訳が選ばれる理由】
- スピードとコストの最適化:機械翻訳の活用で、時間と予算の負担を軽減します。
- 安心のセキュリティ環境:大切な機密情報を安全に扱える、セキュアな環境を構築しています。
- 高品質な検証:CATツールを活用し、逆翻訳作業の効率化を実現します。また、人手による最終的な精査を組み合わせることで、精度の高い品質検証を行っています。
評価表(検証レポート)の発行や、逆翻訳後の翻訳文修正・ブラッシュアップにも対応可能です。まずはお気軽にご相談ください。
翻訳会社への依頼方法について
翻訳のご依頼は、実はとてもシンプルです。
「どんな内容を、どの言語に翻訳したいか」さえ分かれば、まずはお気軽にご相談いただけます。
- お問い合わせ
WEBフォームからご連絡ください。
お手元に翻訳したい原稿がない場合でも、言語や内容が分かれば、概算費用の見積もりが可能です。 - ヒアリング
ご要望やご不明点をヒアリングし、最適な翻訳プランをご提案します。 - 見積もり
見積書にてご依頼内容・金額・納期をご確認ください。 - ご発注
見積もり内容にご納得いただけましたら、メールでご発注ください。
翻訳を初めて依頼される方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
まとめ
いかがでしたか。今回の記事では、逆翻訳(バックトランスレーション)という手法を用いて、翻訳文が原文の内容を正確に伝えているかを検証する方法をご紹介しました。
翻訳の品質は、企業の信頼、法的責任、そして人命にまで関わる重要な要素です。機械翻訳の導入が進み、翻訳のスピードと効率が向上する中で、「正確性」を担保する手段として、逆翻訳を取り入れてみてはいかがでしょうか。
正確な翻訳はプロの翻訳会社へ
ビジネスにおいて、翻訳の正確さは信頼性を支える重要な要素です。
AI翻訳など便利な選択肢も増えていますが、セキュリティリスクや誤訳の懸念もあるため、専門性の高い文書や正確さが求められるビジネス翻訳では、プロに頼むと安心です。
翻訳センターは、医薬・特許・工業・金融・法務などの専門分野をはじめ、ビジネス文書や一般的な文書も、幅広く対応しています。まずはお気軽にご相談ください。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
翻訳センター ブログチーム

とらんちゃん
「とらん」だけに「トランスレーション(翻訳)」が得意で、世界中の友達と交流している。 ポケットに入っているのは単語帳で、頭のアンテナでキャッチした情報を書き込んでいる。
- 生年月日1986年4月1日(トラ年・翻訳センター創業と同じ)
- モットー何でもトライ!
- 意気込み翻訳関連のお役立ち情報をお届けするよ。
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